1998

公開した後に書き足すことが多々あります。

アニメ『平家物語』感想 4話

FODに登録して続きを見ることにした。ネタバレあり。

★★★★★★★

 アニメで悪阻や出産が描かれたものってどれくらいあるのだろう。このアニメが妊娠や出産に焦点を当てているわけではないから、悪阻や出産を描かず生まれた後だけを描いても良いはずだけど、あえて描くのだな。しかも、恨みのある死んだ、または流された男たちがやってきて苦しめるのは、妊娠している徳子と胎児。弱き者たちを狙うんだな。

 今回も境界線が引かれていた。むもんの太刀(?)と言われてたものも境界線だったし、鳥居も当たり前と言えば当たり前だが境界線なのだな。春日大名?って人が重盛の幻想の中で鳥居のところにちょうど立っていたし、今思えば厳島の海で維盛たち三人が鳥居の傍にいたのに対して、びわはそれを見ている側だったから、びわと三人を隔てるものだったのだな。

 アゲハ蝶1話ぶりの登場だったかな?落ちる花というのもよく出てくる気がする。まるごと落ちるのって椿だっけ?このアニメ、ショットひとつひとつが素晴らしいので、すべて記憶していたいぐらい。今回はあまり走らなかったな。

 重盛の目をびわは受け継ぐのか。びわは過去まで背負うのか。琵琶法師となるならば仕方のないことなのかな。あの小さな、成長しない少女には荷が重過ぎる気がする。『風の谷のナウシカ』や『天気の子』では少女が世界の運命や問題を背負っていたけれど、びわはどうなるかな。一人では直接的に、直ぐに何かを変えることはできないが、語る主体となることで小さくても確かな影響を持つことになるのだろうか。ハイジのように野を、山をただ駆け回り、喜びを感じてほしいと思ってしまう。

 びわって髪の毛も伸びないのかな?切っている姿見てない気がする。白い髪の人はびわなのかな?そしたら髪は伸びるのだろうか、それともどこかの時点で伸び始めるのか。白い髪の人の涙も、重盛の涙も良かったな。

★★★★★★★

 すっかり頭から抜けていたけど、琵琶法師ってもともと盲目の人だったような。

 

アニメ『平家物語』感想 3話

 まずはラストシーンから。赤い柱によって境界線が引かれていた。この境界線もすごいがその後、重盛が手前に座り、奥に清盛が立っているショットもすごい。すごすぎる。重盛の意表をつく申し出の場面なのだから、圧する重盛と圧迫される清盛という構図を画面上に作ることを単純に考えれば、立つ重盛と座る清盛でも良さそうである。しかし、立っているのは清盛で座っているのが重盛。ここで重要なのは、きっと背中だろうなと。重盛という人物が清盛のような力を持って制するタイプではないことから、座ったままの背中なのだろうなと思った。

 あと、清盛の瞳に重盛が映りこんでいるショット。これも単純に考えたら、清盛の瞳に重盛が収まってしまっているのだから、重盛が清盛の掌中にいることを象徴しているようにも見える。しかし、ここでも逆なんだよな。しかも、威力を持っている。うまく言葉にできないな……子どもと言えど目の中にいれたら痛いか(笑)(追記:『荒ぶる季節の乙女どもよ。』という漫画を読んでいたら、驚いた側の瞳に驚かした側の人間が映りこんでいたので、普遍的な表現なのか?)

 びわが重盛を止めるために走っていく場面、『かぐや姫の物語』の疾走シーンを思い出したな。短いアニメにしては長かったと思うが、やはり物足りなく感じてしまう。びわは2話でも走っていたので、この後も走るかな。走る少女、成長しない少女か。妊娠できず、産むことに消極的な女性と、先が見え、走り、成長せず、きっと語る主体となるだろう少女。興味深いな。

 水平線を傾ける手法が今回はかなり見られた。くどいような気もしたが、どの場面も水平線が傾かない状況ではないよな。あと今回、赤だけが残ったモノクロ(というのか?)の場面もあった。

 アニメの歴史的にはEDって、バラードな感じで、ノスタルジックだったり、穏やかさがあったりするのが一般的な気がするが、『平家物語』のEDは不穏な感じが強め。最終回とかどうなるんだろ。画面も黒が強めで、カラフルさがないもんなー。

『アルプスの少女ハイジ』感想 11-15話

11話

 おじいさん、大変だなあ。吹雪の雪山は助けに行ったおじいさんだって遭難する危険があるのに、ハイジが心配するからと探しに行くおじいさん、すごいな。アルムの山に冬が来て、雪が積もった最初の方はきれいな雪景色の話ばかりだったけど(危険だからハイジは色々禁止されているエピソードはるけど)、今回(たぶん次回も)は雪がどんなに危険かという話だった。

 ハイジが窓から外を眺めていて、その窓の雨戸をおじいさんが閉める時のショット、すごかったな。構図、ハイジの表情、おじいさんの表情、間、雨戸を閉めるタイミングが良くて、おお、となった。ハイジとおじいさんが見つめ合う切り返しショットも良かった。ハイジの思いを真剣に受け止めている感じ。

 

12話

 ハイジとヨーゼフはただ仲が良いというより良き同士という感じなのね。ヨーゼフは雪割草がお気に召したようで。今回はおじいさんによく注意されてたな。食卓にあまり野菜が出てくることがなかったと思うのだけど、そういうものなのかな。干し肉は何肉だったんだろう。前回、ハイジは狩りに来た男性たちから鹿を守っていたけど、鹿肉とかは食べないのかな。おじいさんとペーターは狩り自体を非難する感じはなかったからな。ペーターは案内していたわけだし。

 雪崩の怖さとか描くのが高畑だよなーと思った。山での暮らしは実際にはもっと大変かもしれないけど、ただ綺麗でリフレッシュできるような自然だけを描いたりはしないよな。

 

13話

 アルムにはもう春が来たらしい。良いな。全部ピッチ―としてしまうところや、喧嘩相手に噛みつくところ、ハイジらしいなと思った。今回はハイジの足音が良かった気がするな。重さがある感じ。前からそうだったのかな。急に意識の上にやってきた。

 ハイジっておじいさんのところに来てから一回も山を下りてないのか。おじいさんは町にハイジを連れていきたくないのかな。「次回は「悲しいしらせ」、お楽しみにね」と言われても………

 

14話

 ヨーゼフが賢い。ペーターは優しい。ハイジに言わなくちゃ、でも言えないと考えている時の表情の変化が良い。ペーターとハイジは普通だったら絶対死んでる………

 ハイジの悪夢のシーンがすごかった。真っ黒な中に、白いヤギが足を広げたような格好でいるのが怖かった。悪人となると肌が黒くなるのは、良くないな、差別的な表現だよな。『ホルス』の時もだったけど。

 おじいさんが縫物しているところ見たの初めてかも?見過ごしているだけかもしれないが。ヤギを買っているのは暮しの為だと言われても、どうしようもないことだと言われても、「分からない」と首を振るハイジ………ユキちゃんどうなるんだろうな。厳しい現実が待つのか、それともまたおじいさんがハイジの為に動くのか。

 

15話

 ハイジとペーターの努力が実る回だった。良かった、良かった。

 ハイジはやっぱり人々とコミュニケーションを取るのが上手い子どもなんだな。ハイジの熱意と純粋さは、思い込みを覆す。誰が頼んだ、と言われて、「誰も言わないわ。あたしとペーターとふたりで勝手にやったの」と言えるハイジはすごい。ユキちゃんを死なせたくないハイジ自身のためと思っていても、努力したんだから飼い主も喜んでくれるはずと思いそうなものを、「勝手にやった」と言えるのはすごい。

 ペーターが明日からもうユキを山へ連れていかなくていいと聞いた後の、落ち葉が舞い上がり、ディゾルブでショットが変わっていくところ良かったな。あと、ハイジがユキたちと遊びながら笑っていたところから、ヨーゼフとユキだけが追いかけっこしながら遠ざかっていき、そこでハイジがまた泣き出す、という一連の流れも良かったな。

 次はもうハイジが8歳になっているらしい。

 

 

 

 

 

アニメ『平家物語』感想 2話

 OP・EDも慣れてきた。早い。アニメの良いところ。早速ライブラリに追加しとこ。

★★★★★★★

 個人的に新海誠作品のような景色の綺麗さが好きではないのだけれど、この作品は景色がマット色で平面的な感じで良い。色の感じもこういうの好き。竹藪のシーンとか、竹藪そのものも綺麗なのに、水たまりと竹を通過した光がめちゃくちゃに綺麗。

 びわが清盛にかみついている時、舌がハートになっていて湯浅政明を感じたよ。あーいうの見ると、キャラクターデザインの選択がますます良いものに思える。コミカルな表情ができるとともに、きちんと人間的な?表情も描けるという。

 それにしても今回は、祇王ともう一人の女性(名前忘れた)の視線のやり取りからの出家先で手を握り合うところが良い。山田尚子監督には本気で中年女性二人のアニメを作ってほしい。二人が恋仲でも良いし、境遇の全然違う二人の物語でも良いし、両方でも良いのでお願いいたします。まだ2話だけど、そういうものを作ることができる可能性をこの『平家物語』には感じる。ここに妻や母の苦しみも加わってくるとなおよし。

 あと今回は、権力を持った男性に駒のように扱われる女性の苦しみが徳子も祇王も言葉にしていて良い。この辺、びわが見ている未来を考えると、徳子の先がどうなるかにも関係してきそうだなと思った。(平家と平家物語に関することを全く知らないし、学校で習ったことも忘れたから言えることかもしれないが。)

 重盛のキャラクターも良い感じだよな。暗闇を怖がる男。見えることだけが怖がる理由じゃない感じの台詞があったし。先が見えるため先を恐れる少年の格好をした少女・びわと亡者が見えるため闇を恐れる男性である重盛の対比はかなり興味深い。少女が先を恐れるのは、成長して女性となった時身に降りかかることを恐れているようにも考えられるし(少女だって被害に遭うから少年の格好をしてるんだろうし)、男性(中心主義)がこれまでにし続けてきたことが闇の中に葬り去られているから闇を恐れていると考えられるのでは。

 

楽しみ楽しみ。

アニメ『平家物語』感想 1話

山田尚子監督によるアニメ『平家物語』の感想。ネタバレ含む。随時更新。

 山田尚子、吉田玲子、高野文子というだけですごく楽しみにしていたのだが、なんとなく見るのが怖かったし、一週間に一話見る行為がすごく苦手なので、迷っていたが見始めた。

 高野文子は『絶対安全剃刀』がすごく好き。吉田玲子は日本のアニメにとって欠かせない脚本家だし、山田尚子とはほとんど一緒に作品作っているかな?期待大という感じ。そしてサイエンスSARUね。京アニじゃないので、作風も変わるかな。

★★★★★★★

OP・ED

 いちおう感想。いま『ハイジ』を見ているからか、アニメのOP・EDという感じがしなかった。今はこういう感じなのかな?あんまりアニメ見ないからな。『映像研には手を出すな!』ではこんなこと感じなかったな。OPもEDも毎回きちんと聞く人間なのでこれから馴染んでいくかな。

★★★★★★★

1話

 電通が製作に名を連ねるか………ちょっと落胆………

 まずやっぱり冒頭、歩く足を描いているところ。山田尚子の『リズと青い鳥』でも冒頭、足から始まる。山田作品の重要な部分だろうなと。溝口健二の『近松物語』とかを考えると日本の文脈では手より足の方が階級を表すものになってくるかなと思うし、足(フェティッシュの対象ではない)や歩く行為というのは「地を歩く人間」を描くことで、つまり浮遊感を持たせず、生きている人間を描くことなのかなと思った。女性の表象を念頭に置いた場合、「地を歩く人間」として描かれているというのはやはり重要なのでは。

 蝶や眉、まつげ、このへんも印象的だった。蝶はなんとなくだが、艶やかな煌びやかな女性のイメージが付いて回る気がするが、この作品では美しさの為に細かい部分が切り捨てられることなく描かれていて好印象。眉やまつげも、まとまりではなく、一本一本描かれているので、キャラクターの造形自体はリアリスティックではないが、多様な人物を描けるだろうな。(このあたり、高畑勲が好きな人間としてはかなり面白かった。)

 あとは平清盛が細い棒を手に取るショットは怖かった。画面内に棒が映されていて、そこに入ってくるのが影だった。手と影を一緒にではなく、まず影。「のびてくる影」。炎の色も綺麗。

 びわが男の子の格好をしていることと、「女の子でしょ。分かる」の部分はどうでるかな……後者は特に本質主義的でもある気がするな。 

 そうだ、あと、会話場面、平面的な構図だよなと思った。正面からというよりも横顔。それで、画面の会話相手がいる側に話す人物を配置している。 

『アルプスの少女ハイジ』感想 6-10話

アルプスの少女ハイジ』の感想。

6話

 見ているとどうしても『赤毛のアン』と比べてしまうのだけど、ハイジがヤギの乳しぼりができるようになっておじいさんに見せる場面とか、マリラだったら絞りすぎだとか何か言うだろうなと思った。キャンディー棒だって、アンがなめていい?って聞いたら夕食の後にとか言うだろうなとか。私の中にアンだけじゃなく、マリラも根付いているみたい。

 田舎はこそこそと監視されているのだろうなと思ってしまうシーンが今回は多かったな。監視している側は良いと思ってしてるんだろうから厄介。太陽を見上げた時のペーターの表情が良い。ペーターは奥行きがあるのに、ハイジは出来過ぎていてなんだか平面的な気がしてしまうなと思っていたが、ヤギの世話を上手くできなくて泣き出すところは良かったな。

 

7話

 ハイジを見てると無性に赤毛のアンを見たくなる。なんでだろ。ハイジの感想よりアンの感想みたくなっている気が……チーズを焦がしてしまい、おじいさんに「無理だった」と言われた後、もみの木の傍でたたずむハイジがとても良いと思うと同時に、5歳が……?とも思ってしまう。度の話でも頻繁に指が4本になってるんだけど、今だったら許されないだろうな。

 

8話

 やってきた小鳥がピッチーじゃなかった時、小鳥から顔と体を背けるときの動きが良い。落胆が動きによく表れてる気がする。ペーターとハイジ最近よく喧嘩するなあ。ハイジもよく泣くし。良い子なハイジより好き。

 

9話

 動物からもおじいさんやペーターからも愛されるハイジが、ヨーゼフにはこけにされている感じが良い。後ろ足で雪をかけられている姿とか。鈴の音が聞こえ始めて、雪の中を跳ねるユキちゃんの映像になるところとか、学校でペーターのことを笑っている児童の声にハイジの笑い声が重なり始めるところとかうまいなーと思ったり。

 ハイジの寝てる場所、絶対寒い。どうしてもペーターが可愛く思えてしまうので、雪まみれになったペーターも可愛い。

 

10話

 ハイジを肩に乗せて雪道を登れるおじいさん、すごい。「あのアルムおんじがねえ」と言われてるけど、おじいさんは過去どんな振る舞いをしてきたのかすごく気になる。ペーターの家の荒れ具合を見るとおじいさんは一人で家を保っているのが分かって、いくらハイジが「良い子」だからと言って5歳児を育てるのは大変なはずだから、おじいさんのハウスキーピングとハイジの世話をどんな風にやっているかも見てみたい。

 ハイジってものすごく愛される存在なんだな。おじいさんもハイジが言い出したなら、ペーターの家を直すことも厭わない。愛されると同時に人びとを繋ぐ存在でもあるのか。雪の上を歩く時の足音も丁寧につけてあってさすがだなあと。

『アルプスの少女ハイジ』感想 1-5話

ようやく『アルプスの少女ハイジ』を見始めたので記録付け始める。

 

1話

 OPのハイジとペーターが手を繋いでくるくる回っている時のペーターの表情がたまらない。

 子どもの頃は、デーテのような女性が悪い人に見えていただろうけど、今は彼女の苦労が手に取るように分かるし、おじいさんを責める気持ちも分かる。ハイジを預けなくてはならないのは彼女のせいじゃないなというところまで今の私は分かってしまう………

 ハイジが服を脱いで駆けていくところは、『かぐや姫の物語』と似ているけれど、感情は真逆なのだなと思った。

 

2話

 『パンダコパンダ』を長く見てきたせいなのか、声優が同じ人だからなのか、ハイジの声がミミ子にしか聞こえない。笑い方とかもミミ子そっくり。ミミ子も動物のマネするし。2話にもデーテが出てくると思わなかった。デーテの苦しみも取りこぼされていない気がして良い。脚本家が良いのか、高畑の意図なのかどっちなのだろう。ハイジ出来過ぎているので、主人公としてはアンの方が可愛い。

 

3話

 夕日のシーンが綺麗で感動的だった後のしおれた花の対比が残酷ですごい。綺麗な花のままにしないのがとても高畑らしい気が。ハイジが帰ってきたシーンのおじいさんのロングショット、薪わりの音と動作がずれてたと思う笑。エンディングのハイジとペーターも可愛い。

 

4話

 小鳥のぴっちーを育てるハイジ。小鳥を旨そうと言うペーター。女の子はこんな風に母性のある存在として描かれるのかーと思いつつ、ヤギの世話をずーっとしているのはペーターだよなと思いつつ、ゆきやぴっちーとひとつに愛着を持つハイジとたくさんを世話するペーターはやはりハイジの方が母性的なものを感じさせるな。

 アンが小鳥を持って帰ってきたら、マリラはおじいさんのような反応じゃないだろうな。ペーター毎日ヤギの世話をしながら、山で一人で過ごしてきたんだもんね、ハイジが山に来なかったらさびしいよね。

 

5話

 不機嫌になるペーターが可愛い。鷹に襲われたり、ヤギがいなくなって霧までかかったり大変だな。マリラにとってアンが大切な存在になるまでと比べると、おじいさんにとってハイジが大切な存在になるのは随分早いな。ここまであまりおじいさんとハイジの関係はあんまり描かれてない気がするのだが。と考えると、アンとマリラの関係は丁寧に描かれていたのかも。ハイジとペーターが手を繋いで走ることや丸太の橋なんかはその後の高畑作品にも見られる。デーテはハイジを大切に思っているんだな。